皆さんこんにちは、季ラリです。
今回のテーマは、『生活保護受給にあたって不安なことを解決します』です。
生活に困窮されている方の中には、「生活保護をすぐにでも受給したいけど、不安なことがたくさんあってなかなか相談に行けない」という方、いらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、生活保護を受給して「これまでの生活と変わる点はどんなところなのか」「してはいけないことはどんなことなのか」について10個の論点を抽出し、現役ケースワーカーであるわたしの妻にインタビューしてまいりました。
皆さんの不安を少しでも解消できるように、具体的かつ分かりやすく記載していきますので、是非最後までご覧になってください。
また、生活保護受給までの流れについて知りたい方は、
「生活保護を受けよう!|相談から保護決定まで~生活保護の受け方と生活保護申請に必要なものを徹底解説~」
の記事に詳しく記載していますので、読んでみてください。
もう一つ宣伝になりますが、以下の『プロケースワーカー100の心得 福祉事務所・生活保護担当員の現場でしたたかに生き抜く法』という本、元ケースワーカーの方がケースワーカーの実務について書かれたものであり、「ケースワーカーになりたい人」や「生活保護の実態を知りたい人」に凄くおすすめです。面白いので是非読んでみてください。
スポンサーリンク
この記事が参考になる人
・生活保護を受給したいけど不安な点があり相談に踏み切れな人
・生活保護を受給し始めるとどんな制約を受けるか知りたい人
・生活保護の受給に係るQ&Aを検索していた人
スポンサーリンク
生活保護受給にあたって不安なこと10選
では、早速Q&Aを見ていきましょう。
疑問① 貯金や財産はいくらまで持てるの?
疑問1つ目は、『貯金や財産はいくらまで持てるの?』です。
生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活を守る」ための制度ですので、いくらご自身が生活保護費を節約してお金を貯めたとしても、「お金があるならそのお金取り崩して生活してくださいよ!」ということになります。
しかしながら、「家電の買い替え」「引っ越し」など将来の不測の事態に備えるために、一定程度までは貯蓄することが認められています。
その金額は、現状の生活保護法では『生活費6ヵ月分』と規定されています。具体的には、「資産申告」や「福祉事務所の金融機関への調査(29条調査)」において、貯蓄額の合計が50万円~100万円程度になると、ケースワーカーから指導が入ったり、生活保護の停止がかけられる可能性が高いです。
また、生活保護の開始時においては、貯金が10万円もあれば、「手持ち金を使い切ってから相談に来てください」と追い返されることになります。
預貯金以外の財産については、概ね次のとおり取り扱われます。
<預貯金以外の財産の取り扱い>
・持ち家
次の3つの要件を満たせば保有したまま生活保護受給が可能です。
①住宅ローンを完済している
②持ち家の換金価値が低い(概ね評価額が500万円以下)
③家を売却することで住むところがなくなる
評価額500万円以上であれば『リバースモーゲージ』という制度を利用し、家を担保にして住み続けながら融資を受けて生活するように促されます。
持ち家に住みながら生活保護を受給する場合、当然ですが住宅扶助を受けることはできません。
・自動車
原則保有は認められません。ただし、次のいずれかに場合には容認される余地があります。
①通院や通勤のために絶対に必要(公共交通機関が利用できない)
②介護や子供の保育園の送り迎えなどで必要
③概ね6ヵ月以内に生活保護から抜けられる見込みがある
④個人事業主の場合、事業用途で不可欠である
・生命保険
原則解約しなければなりません。ただし、次の全てを満たす場合には保有が容認される余地があります。
①死亡保障を目的とした掛け捨て型保険(葬祭費用に充てられる)
②毎月の保険料が概ね5,000円以下
③解約返戻金が概ね30万円以下
疑問② どのくらいの家賃のアパートに住めるの?
疑問2つ目は、『どのくらいの家賃のアパートに住めるの?』です。
これ、気になっている方多いのではないでしょうか。
地域によって物価が異なるため、家賃についても住む地域によってことなりますが、東京都では概ね以下のとおりとなっています。
<生活保護受給者が住める家賃基準(単身)>
・1級地 : 53,700円以内
23区内、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、日野市、国分寺市、国立市、狛江市、東大和市、多摩市、稲城市、小平市、東村山市、西東京市、清瀬市、東久留米市、福生市、武蔵村山市、青梅市
・2級地 : 45,000円以内
羽村市、あきる野市、瑞穂町
・3級地 : 40,900円以内
日の出町、檜原村、奥多摩町、大島町、八丈町、新島村、神津島村、三宅村、小笠原村、利島村、御蔵島村、青ヶ島村
※部屋の面積が15㎡以上の場合の家賃で、管理費や共益費を除く金額です。
原則この基準額以内の物件を探すことになり、家賃は「住宅扶助費」として全額支給されます。
生活保護開始時にこの家賃を上回る基準の賃貸物件に居住していた場合、転宅指導がなされ、転宅しなければならなくなります。
なお重度の障害を有する方については、『特別基準』という別基準が採用され、これよりも高い金額の家賃の物件に住み続けることを容認される場合があります。
23区内で53,700円となると、鉄筋コンクリート造のマンションを見つけるのは非常に難しく、木造や軽量鉄骨造のアパートに住んでいる方がほとんどです。
八王子など郊外に行くと、そこそこ鉄筋コンクリート造のマンションも見つかるかと思います。
疑問③ 月いくらくらいで生活することになるの?
疑問3つ目は、『月いくらくらいで生活することになるの?』です。
ここでは、「収入がない方」という前提で「生活費」が月いくら支給されるのかについて説明させていただきます。
なお、ここにいう「生活費」には家賃や医療費、教育費などは含みません。食費や消耗品費、水道光熱費などの確たる「生活費」とお考え下さい。
<生活保護受給者に与えられる月の生活費(目安)>
・単身者
約6万円~8万円
・2人世帯
約11万円~13万円
・3人世帯
約14万円~16万円
※この金額は、住んでいる地域や年齢などによっても変動します。詳しくはあなたがお住まいの地域の福祉事務所のホームページなどでご確認ください。
※「重度の障害のある方」「母子の方」などにつきましては、別途加算が付き、この金額より増える可能性があります。
わたし自身、社会人1~3年目くらいまではこれくらいの生活費で生活していましたので、個人的には十分やっていける金額だと思います。
不測の事態に備え、月に5千円~1万円程度は貯金したいところです。
なお、1か月を超えて入院した場合には、「生活費」の支給は0円になり、「日用品費」として一律23,110円の支給となります。これは、入院中の「パジャマレンタル代」や「テレビ代」などを想定しているものと考えてください。
ただし、家賃など「生活費」以外の分は変わらず支給されます。
疑問④ 医療費はどうやって支払うの?
疑問4つ目は、『医療費はどうやって支払うの?』です。
生活保護受給者の医療費は、「医療扶助費」として、全額生活保護で賄われます。
生活保護を受給し始めると、ご自身が保有する「健康保険証」は没収され、「医療券」という紙を発行して医療機関を受診することとなります。
なお、働いていらっしゃる方で社会保険に加入されている方につきましては、「医療券」の発行手続きは必要ですが、健康保険証は没収されません。3割分は社会保険から、残り7割分は生活保護費から医療費が支払われるためです。
医療機関に受診する必要がある時は、担当のケースワーカーに電話をし、あなたが行きたい病院の「医療券」の発行を依頼します。すると、ケースワーカーから病院に「医療券」が送付され、あなたが病院を受診できるようになります。なお、緊急で受診したいときは、あなたが医療券を直接福祉事務所に取りに行って、病院に持参することもできます。
なお、「医療券」は月単位での発行になりますので、月に複数回医療機関を受診される場合は、1回発行すれば2回目以降は発行依頼は不要です。
救急搬送された場合などやむを得ない場合には、「医療券」の発行がなくても病院は受け入れてくれます。
まれに生活保護者の受診を受け入れていない病院もあるので、行きたい病院が生活保護に対応しているかあらかじめケースワーカー確認しておく必要があります。
疑問⑤ 旅行は自由にできるの?
疑問5つ目は、『旅行は自由に行けるの?』です。
結論、「国内旅行には自由に行ける」が「海外旅行には行くことは難しい」です。
生活保護の制度上、「海外に渡航した場合には、渡航していた期間分の生活保護費は返還しなければならない」ということになっています。
つまり海外旅行をしていた期間については、「旅行代がかかる」上に、「生活保護費が貰えない」ことになるので、現実的に旅行することは難しいでしょう。
近場の国に1泊2日程度で旅行するくらいなら何とかなるかもしれませんが、そのために長い期間かけてお金を貯めておかなければならないと思います。
疑問⑥ 収入があって黙っていたらどうなるの?
疑問6つ目は、『収入があって黙っていたらどうなるの?』です。
収入があったにも拘らず黙っていてそれが後からばれた時は、「生活保護法第78条徴収金」として収入相当額の生活保護費の返還をしなければなりません。
なお、福祉事務所の「ケース診断会議」と呼ばれる会議にかけられ、特に悪質であると判断された場合には、最大で「収入相当額の1.4倍」の返還金を課せられたり、「指示違反」として生活保護が廃止されることもあります。
市区町村内の課税部署と連携し収入調査を行っていますので、大概の収入はバレると思っておいた方が良いです。
絶対に隠さず申告するようにしましょう。
疑問⑦ 家族や友達からお金を借りたり奢ってもらったりしていいの?
疑問7つ目は、『家族や友達からお金を借りたり奢ってもらったりしていいの?』です。
「生活保護費では満足な暮らしができないだろう」と手を差し伸べてくれる家族や友達がいることは素晴らしいことですが、保護を受給している間に誰かからお金を借りたり、奢ってもらったりすると、その借りたり奢ったりしてもらった分のお金はそっくりそのまま収入として認定され、生活保護費を返還しなければならなくなります。
これはそもそも、「生活保護は、他のどの手段を使っても生活できない場合に、その足りないお金を支給する制度である」点に起因しています。
「生活保護以外の手段でお金を得られるなら、その分の保護費はいらないよね」ということになるのです。
この点、生活保護の制度は凄くシビアであり、「支給される生活保護費では足りない」「贅沢な暮らしがしたい」というのなら、生活保護を抜け出すしかないということを覚えておいてください。
疑問⑧ 親族に知られることなく生活保護は受けられるの?
疑問8つ目は、『親族に知られることなく生活保護は受けられるの?』です。
この質問に対する答えは、「時と場合による」ということになります。
生活保護の支給決定が下りると、一般的には「扶養調査」というものが行われ、あなたの親族(基本は3親等以内)に対し、「金銭的・精神的な援助ができますか?」という手紙が送付されることになります。
しかしながら、あなたのこれまでの親族との関係や家庭内の状況を鑑み、「扶養調査をするのは好ましくない」と判断されれば扶養調査が行われないこともあります。
具体的には、「昔DVを受けていた」「親族が障害を有しており扶養できる状態ではない」「親族が認知症で認知能力がない」などの理由があれば扶養調査を行わないことが正当と判断されるでしょう。
疑問⑨ ケースワーカーはどれくらいの頻度で居宅訪問に来るの?
疑問9つ目は、『ケースワーカーはどれくらいの頻度で居宅訪問に来るの?』です。
一般的に、ケースワーカーの居宅訪問は「1年に2回」実施されます。
この訪問での聞き取り状況を加味し、あなたに対する「援助方針」が立てられ、その時々の状況に応じた「自立支援」が行われることになります。
なお訪問前に必ず日程調整の電話がありますので、抜き打ちで訪問されることは稀だと思っておいていいでしょう。
疑問⑩ 子供の教育に係るお金は支給されるの?
最後疑問10個目は、『子供の教育に係るお金は支給されるの?』です。
お子様がいらっしゃる方におかれましては、「教育費」について凄く気になっていらっしゃることだと思います。
「教育費」については、小学校から中学校までの学校教育に係る費用は「教育扶助費」として、また、高等学校での教育に係る費用は「生業扶助費」として、それぞれ支給されます。
教科書代、学用品代、給食代、通学用品にかかる費用、定期代など、基本的なものは全て支給されると考えてよいです。
さらに、東京都においては、『被保護者自立促進事業』というものがあり、小学校から高等学校までの間に通う、学習塾の塾代についても一定額支給が可能となります。
なお、大学や専門学校については義務教育ではないため、通学に係る費用は一切支給されません。アルバイトなどでお金を貯めて、自力で行くしかない点は注意が必要です。
おわりに
皆さん、いかがだったでしょうか。
生活保護の相談に行こうか迷っていた皆さんにおかれましても、今回の記事を読んで、ある程度保護受給後の生活についてイメージをしていただけたのではないでしょうか。
「生活保護の受給」は人生の終わりではありません。
「自分自身の今後の人生をより良いものにするために、一時的に国に助けてもらうものだ」と思えばよいと思います。
暗闇から抜け出し明るい未来を描くために、是非最寄りの福祉事務所まで相談に行ってみてください。
皆さんの未来がより良いものになるよう心から願っています。
コメント